隅にあったバケツに… あの本が見事に入っていた。 昔、留学したときに買った本。 俺は拾いあげることもせず少し気に留めたまま視線を彼女に戻す。 ふと彼女の手が止まりそっと顔を上げる。 そしてそのぶつかった相手が 俺だと確認できると雨霧のほうが困惑した表情を見せた。 「なんてことしてくれたんだ!」 別に彼女を困らせよう、 そんなつもりじゃなかった。 なんとなく彼女の反応が見たかっただけだった。