「三振!試合終了!!」


割れるような歓喜をバックに、俺はキャッチャーマスクを外して、永松の元へ駆け出した。


春の高校野球予選、花龍野球部はたった今、優勝した。


「やったぞ!永松ぅー!」


「ひっつくな」


相変わらずな永松だけど俺は気にしない。そして対戦相手と握手交わし、報道陣のフラッシュの嵐の中へ。


今回は永松だけでなく、俺にも向けられたカメラ。


「優勝したお気持ちは?」

「永松くんの相方として一言っ」

「勝利の秘訣を……」


さまざまな方向から質問攻め。俺って人気者?なんちゃって。



「勝利の秘訣は、大切なモノがあることです」



麻帆、俺勝ったぞ。今日もまた、永松のボールを受けたんだぞ。


「次の大会への意気込みは?」


「もちろん、勝ちますっ」


─────…


「はっはっはっ!」


俺の前で、大学生になったシゲさんが大きく口を開けながら笑っている。


「勝ちますってカッコつけんなよ!」


「そんな笑わないでくださいよ」