支度をして、携帯の電池を確認するためディスプレイを見ると、丁度美久から着信があった。その頃は着うたなどではなく、オーソドックスなメロディである。確かヒップホップの曲だった。


「結麻~着いたよん。自販機の横に車停めてるから分かると思う」


「分かった~、今行く」


 こうして私は家を出て近所の自販機に向かった。自販機までは歩いて数十メートル。すぐに車が見えてきた。それは当時、美久の車だった白のスカイライン。

 免許を一緒に取りに行き、親に頼み込んで買って貰ったばかりの車だった。

 外は寒いので、白い息を出し、私は小走りに車に駆け寄った。

 暗くて誰が乗ってるか、よく分からなかったが、美久が後部座席のドアを開け、私に早くと手招きしたので、すぐに反対側のドアから乗り込んだ。

 運転席と助手席には知らない男性が乗っており、後部座席には隼人と美久が乗っている。隼人は身体が大きいのに真ん中に座っており、両側から私と美久で挟んでいる状態だ。

 運転席の男性が、振り返り声をかけてきた。


「俺、今西。結麻ちゃんでしょ。隼人に話し聞いてるよ~。隣に座ってんのが、和哉。今からドライブ行こうぜ」


 今西は一気にしゃべった途端、車を急発進させた。

 それから海まで行くことになり、車内は盛り上がった。私も美久も良く喋る方なので、途中、隼人がうるせぇなと苦笑していたのだが、今西はそれを見て楽しそうに笑っている。助手席の和哉は一度も後ろを振り返ることがなく、顔はまだ見えないが、茶色の長髪だった。そして、今西と同じく笑い声を洩らしている。