高遠くんは寂しそうに、そして嬉しそうに淡々と呟く。


「縁談は破談です」

「え?な、何で??」

「何でって…橘先輩が好きだからですよ」


優しく微笑んで、高遠くんは私を見つめる。

南条先輩も…片桐くんでさえも押し黙っている。


「橘先輩が好きだから。泣き顔でも可愛いけど、やっぱり笑ってる顔の方が可愛いから…」

「高遠…くっ」

「だから、僕は橘先輩のことを諦めようと思います」


「僕じゃ先輩を笑顔に出来ないから…」と言って、高遠くんは片桐くんを見た。


「片桐先輩は…橘先輩を笑顔にできますか?」

「あ……っ」


私も、片桐くんの方を見る。