確かにそうだけど、本人が読めれば問題は無いと思うんだ。


おかげで友達にノートは貸せないけど、貸しても読めないけど、まあいいんだ、何事も節約だ節約。


教科書の文面をノートに書き写しながら、俺はさっきの勉強に対しての熱意にして答を返す。


「勉強に対しては半分意地なんっすよね」

「意地?」


「はい。意地っす。俺、中学の時は塾に通えなくて……中学に入りたての頃は塾に通う奴なんてほんの一握り。

なのに学年が上がるにつれて塾に通い出すクラスメートが増えて。
中2の頃はクラスの半分。中3は俺と家庭教師を付けている奴以外除いて、大半が通っていました。

ぶっちゃけ焦りましたよ。

皆の成績は上がっていく一方だし、俺は俺で教科書とか参考書とか、そういったものでしか勉強できないし。

俺なりに努力はしてたんっすけどね、成績が思うように上がらなくてあがらなくて。

だけど塾に行ってない周囲からしてみれば……ちょい遊び人に見られてたんで『空はいいよな。塾がなくて』とか言われてました」


「遊び人……」


「表向きではへらへらしてましたけど、内心じゃ『ああくそっ、違うんだよ、お金がないから行けないだけなんだ!』いつも苛ついていました。

できれば反論したかった。

でもそんなこと言えなかった。
父さん、母さんが苦労しているのを知っていたし、それを盾にして弁解するのもカッコ悪かったっすから。

そんな俺が私立エレガンス学院を受験するって周囲が知った時、もう少しレベルを落とした方がいいんじゃないかとか、無理だとか、散々な事を言われました。

だけどそこの奨学生を狙うしかない。都立も私立も金が高い。親に負担は掛けられない。
 
毎日まいにち、先生たちのところに通い詰めました。放課後もできる限り、先生達に教えてもらって、分からないところは参考書を借りて。塾に通っている皆に対して俺は」


「図書館で勉強していた」


「そうっす。あれ、言ったことありましたっけ? 仰るとおり、俺は図書館で勉強していました。

途中目標がいつの間にか、受験合格じゃなくて、打倒塾生になるほど意地になって勉強していました。

そのせいでちょい、友達と喧嘩したこともあった。最終的には目標を見直して合格したけど、その友達とは喧嘩別れしちゃったなぁ。今どうしていることやら」