天国の丘


 リュウヤさんとリサはアパートに戻った。

 レナは僕と一緒にマーサの手伝いをする事にした。

 何人位集まるのか判らないけど、マーサはたっぷり百人分位の料理をこしらえた。

 足りない酒を酒屋に注文し、テーブルに料理を並べて行く。

 調理場で料理の支度をしている間、マーサは本当に嬉しそうな顔をしていた。

 時折、鼻歌まで聞こえて来る。

 僕は不思議な心持ちで、彼女のその姿を見ていた。

 あらかた準備が出来上がった時には、既に時計の針は八時を回っていた。

「皆、来てくれるといいね……」

 レナがちょっと不安そうな眼差しで、僕に呟いた。

 マーサが、

「レナちゃん、せっかくだから着替えない?」

「私、ちゃんとした服って実家にしかなくて……」

「なら、アタシのドレスを貸して上げるわ。心配しなくても大丈夫。今のアタシのじゃなく、昔のスタイルが良かった頃のやつだから。
 あら、ボウヤ、疑ってるね。これでも、二十歳位の頃は毎晩違う男にプロポーズされてたんだから」

 やっぱり、こういう冗談を言ってるマーサが好きだ。