何となく暗く思い詰めた表情をしている。
何時もなら、店はどうしたとか、いよ!といった感じで、彼の方から声を掛けて来るのに、じっと押し黙っている。
「リュウヤさん」
そう声を掛けると、彼はジーパンの後ろポケットから、折り畳んだ新聞を差し出した。
「今、店に行こうと思ってたんだ……」
新聞を受け取った僕は、マーサの具合が悪くて、今夜は休みになった事を言った。
「マーサの具合が?」
「うん。何か訳ありだったかも。かなり酒を飲んでたようだから」
彼女の頬に残っていた涙の跡の事は言わなかった。
その事は、僕だけの秘密にしておいた方が良いかも知れないと勝手に思い込んでの事だった。
「多分、訳ありの意味はこれかも知れない……」
そう言ってリュウヤさんは、僕に渡した新聞を指差した。
三面記事の所をみると、
『元ミュージシャン暴行を受け死亡』
という見出しがあった。



