例年より幾分厳しかった残暑も、ようやくおさまり、彼岸を過ぎた頃から、秋の訪れを感じさせる風が、僕の部屋にも届き始めた。
夕方になって、何時ものように店に顔を出す。
マーサの所で、働くようになって半年以上になるが、今では僕が先に店を開け、準備をしてる。
合い鍵を差し込むと鍵が開いていた。
中に入ると、澱んだ空気の塊が押し寄せて来た。
暗い、陽の差し込まぬ店内のカウンターの奥で、マーサの背中が見えた。
丸くうずくまっていた彼女の側に寄ると、空になったバーボンの瓶とグラスが転がっていた。
マーサの顔を覗き込むと、化粧が斑に禿落ちていて、泣き崩れていたのだという事が、一目で判った。



