目のやり場に困っている僕を見て、

「そんなに固くならないでよ。他の男がこうして私と二人切りになっていたら、きっとあの人、その男を八つ裂きにするでしょうけど、コーイチ君なら大丈夫。
 多分、コーイチ君の事を弟みたいに思ってるからかな」

 彼女の入れてくれた珈琲はすごく美味かった。

「何か話しでもあるんでしょ?」

「うん。実はね、あの人、今レナちゃんと会ってるの。
 これは、最初レナちゃんから持ち込んで来た話しなんだけど……」

 それは、T・Jの復活ライヴの事だった。

 もう一度、T・Jをちゃんとした場所でライヴをさせ、音楽の世界に再び引き戻して上げる……

 これが、レナの言っていた手の差し延べ方だった。

「それで、ウチの人にレナちゃんが力を貸してくれないかって頼みに来たわけ。
 ああ見えて、ウチの彼はいろいろと顔が広いからね。レナちゃんもその辺を期待しての事じゃないかな」

「そういう話しなら、何も隠れてこそこそする事ないのに」

「ははぁん、さてはコーイチ君、自分がのけ者されたと思ってるのね」