彼と別れた後、レナがぽつりと言った。

「T・Jを拘束しようとしちゃいけないわ。彼、同情とか憐れみを嫌ってるのよ。
 どんなに落ちぶれても、そういう誇り高い心を失わないのが、彼の彼たる所以なんだと思う」

 僕は彼女の言葉に納得出来ず、

「拘束って、僕はただちゃんとしたベッドで彼に寝て貰おうかと思っただけだ」

「コーイチが、優しさから言った言葉だというのは判るけど、T・Jからすればそういう優しさは寧ろ心苦しいものと考えてるんじゃないかな。
 私だって、彼に手を差し延べたいと思ってるわよ。だけど、彼の気持ちを傷付けない形で、その気持ちを伝えなければと思ってる」

「何だか大袈裟に考え過ぎのような気がする」

「大袈裟ってどういう事よ。
 私は、もっとちゃんとした形で自分の気持ちを伝えなきゃって言ってるだけなの」

 レナの言う、違う形というものが、僕にも判るようになるのに、そう時間を必要としなかった。

 しかし、この時点では、彼女の考えてる事が判らず、妙な言い争いになってしまい、暫く関係がぎくしゃくした。

 まあ、この事は別として、こうしてT・Jとの二度目の出会いは、僕の心の中に消える事の無い永遠の想い出となって刻み込まれたのである。