彼はフェンス沿いにゆっくりとバザーの様子を窺いながら歩いていた。

 手にした酒瓶を時々ラッパ飲みしている。

 ロングヘアは前に見た時と変わらないが、髪が結構伸びていて、遠目に見てもそれが判る。

 まるで、

『ジーザス・クライスト・スーパー・スター』

 に出て来るキリストみたいだ。

 変わっていないのは着てる物で、三十度近い陽射しの中、汗一つかかず、厚手のジャケットとズボンを着ている。

「ねえ、リュウヤさん見てよ、彼だよ、ほら!」

「彼?」

 僕は走り出していた。

 いきなり目の前に現れた僕に、彼は思い切り驚いたようで、飲みかけのウォッカの瓶を取られるのかとでも思ったのか、瓶を懐に抱き抱え、回れ右をしようとした。

「T・J僕だよ、僕。前に一度『サッド・マン・スリー』の前で会ったじゃないか」

『サッド・マン・スリー』

 の名を聞いて、彼は足を止めた。