いつの間にか、シンタロー君とユウスケさんもコーラスに加わり、ナナちゃんはうっとりとした眼差しでミミさんを見つめている。

 絵描きの星野さんと僕は、ひたすら彼らのライヴの客側に回った。

 ミミさんの歌が終わると、皆にせっつかれてレナの番となった。

 彼女の事だから、ジャズのスタンダードでも唄うかと思ったら、何と都はるみの

『好きになった人』

 を熱唱するものだから、思い切り受けた。

「何てファンキーな奴だ!」

 とリュウヤさんが言えば、リサは、

「レナちゃん最高!」

 と言って抱き着き、ブチューとキスをする始末。

 そう言えば、リサは酔うとキス魔になるんだとリュウヤさんが言っていたのを思い出したが、時既に遅しだった。

 ユウスケさんが、

「レナちゃんがド演歌なんて信じらんなぁい」

 と、お姉え言葉丸出しで言えば、マックスまでもが、ウォーンと鳴いた。

「お前さんもなかなか良い声してるよ。ホント、ご機嫌なワン公だぜ」

 リュウヤさんが食べかけのスペアリブをそう言って放り投げると、マックスは、ゆっくりとそれを食べ始めた。

 マックスは実は随分とオジイチャンだから、スペアリブじゃなくソーセージの方が良かったように思うのだが、それでも彼は何とか骨をガリガリとかじっていた。

 芝生の青臭い匂いを嗅ぎながら、何本目かのビールを開けていた。

 T・Jの姿を久し振りに見たのはその時だった。