じゃあ僕の方はと言うと、残念な事に彼女の事を十分の一、いや百分の一も知らない。

 何故かと言うと、彼女は自分の話しを殆どしたがらなかったからだ。

 無理に聞こうとすると、目に見えない扉を降ろされてしまいそうで、彼女が自分から話すのをじっと待つしかなかった。

 彼女の事で少しだけ判った事は、実家が横浜の本牧で、星座が僕と同じ双子座。

 血液型はABのRH(-)。

 昼間は立川のデパートにあるアクセサリーショップで働き、好きな食べ物が生ハムメロン。

 高校は、横浜の有名女子高に二年の夏迄通っていたが、自主退学し、今は通信制の大学検定を受けている。

 退学した理由は教えて貰えなかったが、その事で両親とは現在も余り折り合いが良くないらしい。

 これだけの事を知るのに、何十回彼女をアパート迄送った事か。