乾杯しながら僕は、正直ドキドキしっぱなしだった。

 多分、一目で彼女にいかれたんだろう。

「そうだ、私の事レナと呼んでくれて構わないのよ。君って呼ばれると、妙に照れちゃうから」

「判った。じゃあ、僕の事も貴方なんて呼ばず、コーイチでいいよ。
 貴方なんて呼ばれ方、中学の国語の教師に言われた時以来だから、何だか落ち着かなくて」

 僕と彼女はあっという間に互いの距離を縮めた。

 自分でも驚く程上手に会話が出来ている。

 チェリーボーイではないけど、こんなにスムーズに女性と会話が出来たのは、多分、生まれて初めての事かも知れない。

 僕がもう少し何か話そうとしたら、店内の照明が消され、ステージにスポットライトが落とされた。

 それまでワイワイと話していた客達は、ステージに体を向け、口笛や歓声を上げ始めた。

 すると、客席を掻き分けるようにして、二つの人影がステージに現れた。

 スパンコールで七色に輝くタイトなイブニングドレス姿の女性はリサで、そして寄り添うようにして後ろに立っているのは、紛れも無くリュウヤさんだった。

「おい、嘘だろ、あの二人じゃないか……」

 思わず椅子から立ち上がり、素っ頓狂な声を出した僕に、先ずリサが気付いた。