よく見ると結構渋目の二枚目で、笑った顔がなかなか魅力的だ。

 一目で僕とは違うタイプの人種だと判った。

「私は蒔田リサ。リサと呼んでくれて構わないわ」

「一度、引越しの挨拶に来たんだが留守のようだったので、それっきりになっちまった。
 まあ、最初の出会いはベストってなわけには行かなかったけどこれから仲良く頼むよ」

「こちらこそ。僕の方は工場勤めなんで、夜勤とかもあるから、夜は留守にしたりしますので、その事で迷惑を掛ける事があるかも知れません」

「それならお互い様だ。俺達も夜は留守にする事が多いし、それに時々この音がうるさく感じるかも知れないけど堪えてくれな」

 男はこの音が、と言いながら笛のような物を吹く真似をした。

 それがサックスの事だと判ったのはもう暫く後の事なのだが、その音がうるさいなどと思った事は、ただの一度も無かった。

 寧ろ、その音色に聴き惚れ、時には理由も無く涙を流した事もあった。

 こうしてリサとリュウヤに出会った訳だが、思い返すと、同じ日に『ホワイト・クリスマス』の男とも知り合えた事が、何だか運命的なものに感じた。