ぐいっと手を引っ張られて、私は颯の胸の中にすっぽり収まる形になった。 「ちょっ…颯!?」 「…いいじゃん。」 トクン、トクンと、颯の心臓の音が聞こえてくる。 「…初めて、心臓の音、聞いた。…安心する。」 安心する。 ほっとできる。 初めてだった。 ここまで安心できるのは、初めてだった。 友達といても、 家族といても、 どこか張り詰めていた。 本当に体を委ねて、気持ちを休められる場所。