サクラ


 窓に段ボールの目隠しがされた。

 私の五感が告げた。

 そうか、そういう事か……

 畳んだ布団の四隅をもう一度揃え、私物と衣類を整頓する。

 見苦しくないな……

 誰かに告げられた訳では無い。

 私自身の五感が告げて来たのだ。

 はっ、と思い出し、私は急いで下着を替えた。

 手付かずの真新しい下着を前々から一組だけ用意していた。

 迎えが来る前に間に合い、安心して扉の前に正座をする。

 鍵が差し込まれる音がした。

 はっきりと聞こえる。

 重々しく開けられる鉄の扉。

「梶谷…出なさい」

 普段は柔和な眼差しを見せる担当が、心無しか険しい目をし、声を震わせていた。

「ご苦労様です」

 両手を畳に揃え、一礼をし、スリッパを廊下にそっと置く。

 連行職員が私の身体を点検する。

「判ってるな……」

「はい。長い間お世話になりました」

「うん……」

 ゆっくりと、私を気遣うかのように歩く職員達。

 二度と戻らぬ廊下を踏みしめながら、私は彼らの後に着いて行く。