サクラ


 いつもと変わらぬ起床の音楽とチャイム。

 点検迄の慌ただしいひと時。

 布団の四隅を揃え、僅か畳二枚分の部屋を掃除する。

 そそくさと洗面を済ますと、刑務官の野太い声が、点検を告げる。

 慣れた日常の動作。

 正座をし、点検を待つ間、そういえば今日が最後の水曜日だと気付き、思いを馳せる。

 ふと、一本の髪の毛が落ちていたのに目に止まった。


 ちゃんと箒で掃いたのだが……


 頭を刈って四週間、そろそろ刈って貰わないと、などと思い、二センチ程の髪の毛を摘む。

 よく見ると、その一本だけではなく、他にも何本か落ちていた。

 何故か私はそれが気になり、早く点検が終わらないかと気が急いて来た。

 点検終了の合図とともに、再び箒を手にした。

 今度は、掃き切れない小さな埃とかが気になりだし、朝食に目もくれず、雑巾掛けを始めた。

 いつの間にか大掃除となってしまい、私はお陰で時間の感覚を忘れていた。

 作業材料が入って来ない事も忘れていたのだ。