『拝啓。
 舎房の窓から見える桜の木に、淡いピンクの色が付き始めました。
 今日は天気が余り良くなく、雨が降ったり止んだりで、せっかくの花びらが散りはしないかと心配です。
 満開に咲いている時間が短いのですから、開く前には散らせたくないものですね。
 先週、掛けて下さった曲、今日、別な番組でも流れてました。
 何だか、たったそれだけの事なのに、すごく嬉しい気分になれたのです。
 春という季節のせいもあるかも知れませんね。
 いや、やはり貴女様から頂く温かい言葉のお陰なのでしょう。
 こうしてお手紙を頂戴し、その返事を書く。
 ラジオからは、貴女様の優しげな肉声を受け取り、私の中にこれまでは無かった、物を愛でる心が生まれたからなのでしょう。
 こんなにも時間を大切に過ごさせて頂けて、私は幸せな気分です。
 千晶様、新しい職場でも、変わらぬお声で沢山の人に優しさを届けて上げて下さいませ。
         敬具       梶谷耕三
麻宮千晶様     』