『……あっという間に時間になってしまいました。皆さんのお便りを此処で全部紹介出来ないのが残念なんですが、お名前だけでもお読みしますね……』
放送の始めに何かあったのか、声を詰まらせる所があったけれど、その後は明るい彼女に戻っていた。
首から上だけ冷たい空気に曝されて、耳が冷たいが、届く声は温かい。
『……そして最後に東京のK・Kさん、いつも丁寧なお手紙、本当にありがとうございます。
では、最後の曲ですが、今夜はエディット・ピアフの曲でお別れしたいと思います。
【バラ色の人生】という曲なんですが…K・Kさん、ピアフは、若くして亡くなったフランスのシャンソン歌手なんですけど、彼女の人生は決してこの曲の題名のようにバラ色ではなかったんですね、悲劇の歌手とまで言われてましたけど、だからこそ悲しい歌だけじゃなく人生を謳歌する曲とかも、より切々と歌えたのかなあって思うんです。
辛い事ばかりだからこそ、ほんの少し、僅かな喜びも幸せに思える事があるんじゃないかなと……それで、この曲を選びました。
わたしから、弟さんと、そしてK・Kさんへ。
エディット・ピアフの【バラ色の人生】……』