紅白歌合戦が終わり、ラジオから除夜の鐘が流れて来た。

 一年のうちで、大晦日の夜だけは、深夜の12時迄ラジオ放送が入る。

 出演する歌手達の顔を思い浮かべられる人数が、年々減って来ている。

 今年も終わった。

 特別に感慨など湧かない。

 また一年、生かされた。

 それしか実感出来ないのが正直な気持ちだ。

 深夜の12時丁度にラジオは切られ、静寂の中に放り込まれる。

 時折聞こえて来る便所の水を流す音が、過敏になっている神経を刺激するだけで、私には安息などやって来てはくれない。

 仕方の無い事なのだ。毎年、この季節は私を暗黒の闇が襲う。

 眠るよりはまだこうして起きていた方が、その闇から逃れられるが、身体は眠りを求めたがっている。

 医務課で処方して貰った睡眠薬を飲んだりするが、たまに逆効果で余計に酷い悪夢を見る事がある。

 仕方の無い事なのだ。

 それが報いなのだから。

 私が安息を得られる日は、きっと、自分の罪を償うその日にじゃないとやって来ないのだろうから。