いろいろな出来事が重なる日というものがある。

 実際に起きてみると不思議なもので、


 ああ、勿体ない…

 という気持ちになるものだ。

 収容されている死刑囚が、全部でこの拘置所には五十人近く居ると、以前雑誌の記事で読んだ事がある。

 今は多分もう少し多いかも知れない。

 その死刑囚の中でも、私のように作業をしている者は僅かに十人足らずで、多かった時でも十五人を越えた事はなかった。

 どういう基準で死刑囚の作業が認められるのかは、はっきりと私には判らない。とにかく死刑が確定した者全員ではないことだけは確かだ。

 作業をしている死刑囚だけ、月に一度、定期的に食事会なる慰労会がある。

 施設内にある集会室に集まり、事前に希望を聞かれた特別メニューの食事をし、その後二時間程ビデオ鑑賞をさせて貰える。

 特別メニューというのは、拘置所内の職員食堂のメニューの事で、その中からラーメンや定食等を注文出来るのだ。

 お金をちゃんと払うのだが、それは働いた作業報賞金から天引きされる。

 いろいろな意味でこの食事会を楽しみにし、その日が近付くと、ああ、又一ヶ月生きられたなと思うのだ。

 社会に居る時に食べたのと同じ味に再会出来る喜びもある。

 ラーメンには湯気が立ち、定食や丼飯の御飯は麦飯ではなく白米。

 銀シャリとはよく言ったものだ。

 まさしく銀色に輝く米をゆっくりと時間を掛けて噛み締めて、しばし己が死刑囚である事を忘れる。