制作会議で千晶の提案した特集が正式に通った。

 尤も、殆ど千晶が何かを企画したりすると、これ迄も大概がその通りになってきた。

 会議といっても、それは打ち合わせ程度なものだが、一応、局のお偉方の承諾は得なければならない。

 千晶は、11月の中旬の水曜日に放送予定を決めた。

 もう少し早く放送する事も可能だったが、千晶なりの思惑があっての事だった。

 11月は、放送業界にとって、番組編成上、特番を組む事が多い。

 番組改編の時期とも重なるからだが、音楽が主体のFM局の場合、各レコード会社との絡みも影響している。

 ゲストも呼びやすい。

 年末商戦に向けて、ラジオのパワープレイは、各レコード会社にしてみれば絶好の宣伝機会である。

 ギャラの安いラジオであっても、プッシュしたいアーティストを積極的に出演させてくる。

 その為に千晶の番組も週末に特番枠を組み、通常より一時間延長した日を何日か取ってある。

 彼女はその一つの枠を水曜に持って来るようを伝え、そこでピアフの特集を組むようにしたのである。

 それと、ただピアフの曲を多く流すというだけではなく、千晶は曲と曲の繋ぎを朗読で埋め、一本のラジオドラマのようにしようとも言った。

 大越も、

「ピアフにピッタリ合いそうな短編小説を俺の書斎から選んで来よう」

 と言って、結構乗り気になっていた。

 こうして、千晶が梶谷と交わした約束の日が決まったのである。