「よう、何だ夕べは飲み過ぎたのか?寝不足の顔してるぞ」

「寝てないのは確かだけど、ダイさんと違って飲み過ぎじゃないわよ」

「じゃあ、新しい男と朝まで愛を語り合っちゃったのか?」

「今日は、ダイさんの冗談に笑える心境じゃないの」

「そう気分を害すな。もうすぐオン・エアなんだから」

「ねえ、うちにエディット・ピアフの音源どれ位あるの?」

「おいおい、FM局のディレクターにする質問じゃないぞ。ピアフなら大概の曲があるぜ。クリアな音源という事なら、復刻版のCDを焼いたのもあるし、オリジナルの声に近い方がって事なら、昔のLPから録ったやつもある。より取り見取りだ」

「今度、特集やらせて」

「ピアフのか?」

「駄目?」

「いや、悪くない企画かもな。
 それにしても、ちぃがピアフとはな。お前さんの趣味からすると、モータウン辺りかと思ったんだけど」

「わたし、趣味で仕事してる訳じゃないわよ」

「俺はてっきりラジオは趣味で、飲むのが仕事だとばっかり思ってたよ」

「ダイさんとは違います。それに、わたしはおねえちゃん達に囲まれては飲みませんから」

「よし、いつものちぃに復活だな。
 さあ、時間だ時間。」


 大越のがっしりした後ろ姿を見ながら、千晶はかなわないなと、微笑んだ。