今年の夏は、やけに早く通り過ぎたような気がした。

 比較的、雨の多い梅雨だったせいもあり、そう感じたのかも知れない。しかし、それだけではない事も確かだ。

 自分の手紙をラジオで読まれたあの日から、私は毎日ある事を期待し、心待ちにしていた。

 その期待は、自分の中ではほんの数%程度でしかないものなのだが、僅かでも何かに期待を寄せるという事が、これ程胸を踊らせ、明日という日を待ち焦がれるものだと今更ながらに知った私であった。

 それは、書いた手紙が、今一度番組の中で紹介されるか、読まれなくともリクエスト曲を流して貰えるだろうかという期待であった。

 社会から隔絶した世界に身を置く私の唯一の繋がりは、弟の達夫だけだった。

 弟という、細いたった一本のロープしかなかった社会との繋がりに、新たなロープが目の前に下りて来たのだ。

 放送のある水曜日をこれ迄以上に心待ちする私。

 二度目の手紙を投函してから、彼女の声を四回耳にした。

 ラジオからは、あの日私を呼び掛けたK・Kのイニシャルは、まだ流れていない。