丁度、ブロックの瓦礫が側にあり、私はそれでガラスを破ろうとした。

 物音を立てて近所の住民に見付かってはいけないと思い、ブロックを打ち付けるのに力が入らなかった。

 最初の一撃では小さなひびしか入らず、もう一度ブロックを振り上げた。

「何してるっ!」

 いきなり声を張り上げられ、私は驚きの余りに悲鳴を上げそうになった。

 頭上迄振り上げていたブロックをその場に投げ捨て、私は脇目も振らず逃げた。

 私を咎めた声は最初の一声だけだったが、逃げている間中、ずっと追って来ているように感じた。

 幾つもの路地を曲がり、足がもう動かないと思う位に走った。


 息が苦しくて、もう限界だ……


 同じような造りの家が建ち並ぶ一画に出た。

 家と家がくっつくようになっているその家並に、私は身を隠す事にした。

 僅かばかりの街灯の光りすらも、私には恐怖だった。

 光りの届かぬ暗闇を求め、身一つ分の隙間に身体を押し込んで行く。

 壁を擦るジャンパーの音にすら、恐れおののきながら……