繁華街で彷徨っているのであれば、まだビルの物陰で夜風を凌いだりコンビニで時間を潰す事も出来たであろう。

 それに、あんな恐ろしい事をする事もなかったかも知れない。

 いや、きっと遅かれ早かれ、私はそうする運命に立っていたのかも知れない。

 運命という言葉。
 
 便利な言葉である。

 その一言で、己が犯した罪をある一面では正当化出来る。しかし、それは真実ではない。

 だが、私は気付くのが遅過ぎた。

 人通りが絶えた住宅街の中を彷徨っているうちに、私は駐車場に停まっている車を物色し始めていた。

 ウインドウ越しに中を覗き、金めの物を探し歩いた。

 寝静まった住宅街の一画にあった駐車場で、一台の車に近付いた。

 高級車だから、きっと何か金めの物があるに違いないと短絡的に考えた私は、ウインドウガラスを割る為の手頃な石を探していた。