バブルという一つの時代が、人々の狂乱の終焉とともに祭の後の虚しさの如く幕を降ろした。

 クリスマスが終わり、華美なイルミネーションも外された街並みの中で、私は途方に暮れていた。

 一年半前に勤めていた会社は倒産し、その後、幾つかの会社に職を求めたが長続きはしなかった。
 
 理由は全て自分にあったのだが、その事を認めず自覚もしないでいた私に、十年連れ沿ってくれていた妻は愛想を尽かした。

 離婚して半年、私は世の中の全てを恨み、全ての人間を憎んでいた。

 憎しみからは、何も生まれはしない。

 十数年経った今になって、そのことにやっと気付いた。

 きっと、憎しみに言い訳を求めていたのだろう。

 住む所も追われ、寒さと空腹に打ちしがれていた私は、街を行く人々の群れに、妬みだけを抱いていた。

 ポケットの中には、立ち食い蕎麦一杯分の小銭だけ。

 寒さと空腹の中、垢に薄汚れたジャンパーの衿を立てても、首筋を刺す冷気に抗う事も出来ない。

 何処をどう歩き続けていたのか、気付いた時にはすっかり夜も更けていた。