「ちぃ、手紙だ」

「ありがとう」

 大越がわざわざ千晶のデスクまで来て手紙を持って来る事など、滅多に無い事だったから、少し戸惑った。

 しかし、差出人を見て納得した。

「サクラのお手紙だ」

「見れば判るわ」

「二度は無いって先週言ってあるからな」

「二度ある事は三度あるって聞こえてたけど」

 交わす軽口も、この時はいつも程の気軽さが感じられない。


 ホント、綺麗な字……


 宛名である番組名と自分の名前に、暫く見とれていた。

 鋏で封筒を開け、分厚い便箋の束を取り出す。

 前回とは書き出しがまるで違っていた。

 何度も放送で手紙が読まれた事の礼が書かれてあり、あの晩は嬉しさの余り、すぐにこの手紙を書いたらしい。

 何枚目かの便箋から、文面ががらりと変わった。


『……実は、私は近々死を迎えねばならない者なのです。
 病気とかではなく、法に定められた下で迎える死です。もう、お判りだと思いますが、私は死刑囚なんです。刑が確定してから、既に幾つもの季節を過ごして来ました。
 ひょっとしたら、明日、いや、この手紙が貴女様の手元に届いた時には、私はもう絞首台の露となっているかも知れません……』


 読み進めていた千晶の目は、絞首台の文字の上で止まっていた。