十七年、私は此処で生活をしている。

 いや、させられている。

 毎日決まった時間に起床し、定められた動作をし、ただひたすらその時を待つ。

 私の視界に入る現実世界は、鉄格子と鉄の扉、そして、四角く切り取られた代わり映えのしない空。

 風呂までの距離は、歩数にして僅か三十三歩。前後しても五歩とは狂わない。

 入浴日以外の晴れた日は、運動場で三十分ばかり日光浴が出来る。風呂場へ行くよりは遠出だが、それでも階段をフロア一つ分下がるだけだ。

 私から誰かに話し掛るような事は滅多に無い。

 たまに話し掛けられる事はあるが、相手は職員と、雑用をしている者が事務的な事で声を掛けて来る程度。通常のコミュニケーションなど、此処には存在しない。

 だから、僅か十分にも満たない面会があった日は、その時間の早さが、普段の何倍も早く感じる。面会での話の内容に関係無くである。