流れていた曲がゆっくりとしぼられ、代わりに彼女の声が私の頭の上から優しく降りて来た。
『……K・Kさんは、お便りの中でこんな事もおっしゃってます。
私は、ただ生かされているだけの日々を送っていますが、その日が来る事を心安らかに受け入れられているのは、ほんのちょっとの喜びや、感動を素直に感じられるようになったからです。日常の僅かな変化や出来事の中に、私はそういうものを発見し、ああ、今日も一日過ごせたんだなと感じ取れてます。
小雀が雨の中、気持ち良さ気に羽根をばたつかせているのを見て、水浴びをしてるみたいだと思う自分が居て、また、一杯のお茶の温もりをあったかいと感じる気持ちになり、窓辺に射す西陽を柔らかいと思う心があって、ああ、生きてるとこんなにも沢山、心を動かしてくれるものがあるんだなと、そう思える今なんです。尊いって、ひょっとしたら、こういう何でもないような瞬間にこそあるのかなと思いました。
この番組もそうなんですよ。ちあきさんが語り掛ける言葉、そして聴く人の胸の奥にしまわれた記憶を呼び覚ます懐かしい曲。今日もまた、きっとちあきさんから、何かを頂けるのでしょう……』
廊下を夜勤の刑務官が通った。



