布団から跳ね起き、立ち上がって背伸びをした。
扉の上に埋め込まれたラジオのスピーカーに耳を近付ける。
そんな事をしなくても、充分な音量なのだが、私はほんの少しも聴き逃したくない気持ちから、そんな事をした。
『……という事で、本当は毎日ちあきさんの放送を聴きたいのですが、いろいろ事情がありまして、水曜日しか聴けません。ちあきさんの声を来週も聴けるだろうかと、いつも思いながら、放送が聴ける水曜日は一言も聴き漏らさずに耳を傾けております。
そうですか…土日以外の平日は毎晩放送してるんですけど、K・Kさんは、ちょっといろいろと事情があって水曜日しか聴けないという事なんですが…K・Kさん、お耳に届いてますか?
今日は、その水曜日です。
どんな音楽がお好きか、手紙にはリクエスト曲が書かれてなかったのですけど、今夜は、わたしから一曲プレゼントさせて頂きますね。
便箋に花びらのスタンプ…サクラの季節は終わりましたけど、K・Kさんもいつかは満開の花を……』
彼女の言葉が、そこで一瞬途切れた。
間を置いて、彼女が私の為にと言ってくれた曲が流れて来た。
昔、何処かで耳にしたような、そんな懐かしいメロディーだった。
彼女があの後の言葉に詰まった意味を理解出来たのは、世界中で私だけだった。



