「ワインあるわよ」


 ふっと考え込んでいると、直美が呼ぶ声が聞こえてきた。


 治登がベッドから頭を起こすと、彼女がワインのビンにグラスを二つ抱えて、こっちに来る。


「おう、いい酒だな」


 ブルゴーニュ産の八年物だった。


 直美が栓を開ける。


 治登は何かと煩わしい古賀原のことや会社のことを頭から外してしまって、飲み始めた。


 熟成した酒はやはり美味い。


 想像以上に。