終礼が終わってひかるは出勤のために、急いで教室を出て階段を駆け下りたところで、誰かに腕をつかまれて、動きを止められました。


「えっ?」


「あの・・・」


保健室の近くに倒れていた1年生でした。

「1年D組の松田祐希といいます。先輩が先生を呼んでくれたときいて、お礼をいいにきました。」

「お礼なんて、大したことしてないのに・・・。熱、大丈夫なの?」


「ええ、薬もらって1時間ほどしたら、このとおり、もう大丈夫です。
あの・・・質問なんですけど、水口先輩はクラブとか入っていますか?」


「え、入ってないけど。どうかしたの?」


「いえ、先輩が所属してるクラブに入れればいいなって思ったんですけど・・・無所属だったんですかぁ。
じゃあ、クラス役員とかは?」


「え~と・・・さっき図書委員になったけど・・・。」


「図書ですか、そうですか。・・・あの、急いで帰られるんですか?」


「ううん。ちょっと私はワケありなもんだから・・・これから仕事なの。
仕事してお買いものして帰らなきゃいけないから、またね。」


「あ、またです。さようなら・・・」



((感謝されちゃったのかな。1年生のボクってやっぱりかわいいな。
あら、これじゃ私ってオバサンみたい・・・))

憧れの先輩になった気分でにこやかに出社したひかるでした。


仕事は昨日同様、三浦がどっさりとひかるの机に置いてくれていました。


少し、慣れてきたせいか、ひかるは要領よく仕事を片付けることができました。



「水口さんちょっと・・・」


三浦に呼びとめられて、ひかるが近付くと、

「今週の土曜なんだけど・・・お昼1時30分から僕はある場所でプレゼンテーションしなきゃならないんだ。
それで、水口さん土曜日って学校休みでしょ。
申し訳ないんだけど・・・助手で来てくれないかな・・・。と。」