「――愛」


オレは、反射的に叫んでいた。


――スウッ。


愛は、返事の代わりに大きく呼吸をした。


それは、きっと、最期の合図だったのだろう。おじさんが病室を出て行った。


「愛?」


それでもオレは、呼びかけずにはいられなかった。


「愛――」


あふれる涙を拭うこともせず――。


ふと、窓の外を見ると、


――満開の、桜。


初めて愛と会った時のように――。




8年前、桜の木の下で「よろしくね」と天使のように微笑んだ少女は、今。
















――ほんとうの天使になった。