「優菜~~
 美鈴の顔が気に入ったなら、記念にあげるからさ。
 頼むから、早く次の顔をつけてくれない?
 婆さんの格好で、そのままいると、まるで、妖怪のっぺらぼうみたいで、不気味だからさぁ」

「あ、は~~い、すみません!」

 技術さんの、ぞっとするよ、なんて声を後ろで聞きながら、わたしは、新しい顔をつけた。



 わたしは、女優よ。


 美鈴の顔を机に置いて。

 心の片隅に残った、切なく痛む何かを振り切るように。

 わたしは新しい顔を上げた。

 次に待つ、新しい役に向かって。







        <了>


H22 3.11 AM2:41