よくは聞こえないけど、多分私と一緒に行くことを伝えてる……んだと思う。

「ごめん。で、どこ行けばいい?」

私のところに走って戻ってきた彼。

「美術室まで」

「分かった!さき行ってるから!!」

行き先を告げた途端走り出した彼。

……速っ……。

流石バスケ部。

まぁ…貴重な練習時間奪っちゃってるわけだし…。

私も急いで後を追った。

先に行っても鍵開いてないだろうし……。


思った通り、美術室の鍵は開いてなかった。

その美術室の扉の前に座り込んでる黒髪の彼。

まだ制服姿のままの彼は私が来たことに気づいて視線を上げた。


一瞬。

ほんの一瞬だけ真剣な瞳をした彼はすぐに無邪気な笑顔になった。