さっきまで立ってた彼が腰を下ろしたとき。

私の色付けは始まった。

何も考えることなんてない。

ただ好きなように、思ったように色を重ねてくだけ。

キャンバスの中のアイハラソウタにどんどん色が付いていく。

その中でも目立つのは黒。

アイハラソウタの黒い髪。

「私ね…、この黒髪に惹かれたの……」

ポツリ、と口から零れた言葉。

「このって…、俺の髪?」

「うん、そう」

大体の作業を終えて、私は息を吐きだした。

視線を落として溜息をつく。

…あ~あ、またやっちゃった……。

気付けば絵具だらけの制服。

「……終わった?」

私が筆を置いたのを見た彼が私の顔を覗き込んできた。