君は僕のお姫様  〜紫月妖怪退治〜

「うんうん。儂は戦う気など無いぞ」
次郎爺が笑顔のままそう言った。

人の老人によく似て、それでいて何処かが歪。


マーナオは不敵な笑みを作ってみせ、
「力試しなのにか?」
歩みは止めずにそう言った。


「儂は戦う気など無いぞ」
次郎爺は同じ言葉で返す。

「…それはそうだろう」

人の猿真似なのか、次郎爺には喋れた所で会話の力は無いのだろう。
姿も、言葉も、人間を釣る為の疑似餌にすぎない。

―所詮は獣か。

弊からはゆかりの制止の声がする。
マーナオは歩みを止めない。

マーナオと次郎爺の距離は縮み、

「戦わずに丸呑みだからな」

マーナオの言葉を皮切りにして、
次郎の顔が膨れ上がった。