甘い魔法②―先生とあたしの恋―



とりあえず嫌われるような事をしていなかった事に安心したのも束の間、市川の指摘で自分の服装に気付く。


昨日飲んでいた時のままの服装。

つまりはスーツのまま。


市川がかろうじで上着とネクタイは脱がしたらしく、ハンガーにかかったそれが目に入った。


「やべ……シワんなるし。

つぅか市川が脱がしたんだ、俺の服」

「服ってっ……上着だけじゃんっ!

変な言い方しないでよ。

……もう早く自分の部屋戻ってお風呂入ってきなよ。早くしないと朝ご飯食べられなくなるよ」

「市川が作ってくれんの?」

「……いつも通りコーヒーだけね」


まだ眠いのか、目を瞑ったまま言う市川に、俺は口許を緩ませる。


「それで十分」


名残惜しくて市川の頭を数回撫でてから、ベッドを下りる。

カーテンの隙間からは眩しいほどの日差しが入り込んできていて……一つ背伸びをしてから自分の部屋に戻った。