「いえ……ないです」
「別れた彼氏とか、恨みかってそうな女子とかは? あとは、自分からは告白とかできなそうなオタク気質の男子とか」
具体的な指摘をされて、啓太の顔が浮かぶも……静かに首を振る。
啓太とはあれからは顔を合わせていないけど、またバスケと向き合ってるって和馬に聞いてるし、こんな事する人じゃない。
「いえ……多分、いないです」
「そっか。……よければそのメール見せてよ。俺も犯人探しに協力するよ」
「え……」
坂口先生の予想もしなかった申し出に、動揺して目を逸らす。
メールを見せたら先生に本当の事がバレちゃうし、だからって見せない理由も見当たらない。
ケータイをぎゅっと握りしめていると、坂口先生はふっと笑みを零して笑いだす。
「別に嫌ならいいよ。強制したわけじゃないんだ。
そうだよね、彼氏とのメールとかもあるだろうし、そう簡単にケータイなんか見せたくないよね」
「……すみません」
「ううん。全然。あ、早く食べた方がいいよ。冷めちゃまずいし」



