あたしの漠然とした理由を聞いて諒子は顔をしかめたけど、それ以上問いただしたりはしなかった。
「あ、今はって事ね。これが続いたりするようだったら、ちゃんと先生とも話すから」
「そうだね。もう少し様子見てからでもいいのかもね。
矢野セン心配症っぽいし」
「うん」
「っていうか、コイツ何が狙いなんだろうね。
『別れろ』とか『黙ってて欲しければ金出せ』とかなら分かるけど……これじゃ何が目的だか全然分かんないし」
降参、とでも言いたそうにため息混じりに言う諒子に、あたしも頷く。
「なんか……いつ見られてるんだか分からなくて、ちょっとだけ気味が悪い」
思わず本音を漏らすと、諒子が心配そうな表情を向ける。
「あ、ごめん。なんかほら、付き合ってるって事を知ってるって事は今までのどこかで見られてたわけだし、なんか……」
諒子の心配に気付いて慌てて説明しだした時、寮のドアが開く音がした。
諒子が部屋のドアを振り返って笑顔を見せる。
「あ、矢野セン帰ってきたね。
……じゃああたしはそろそろ帰るかな」
「あ、うん。遅くなっちゃってごめんね。ありがと……」
「ストップ」



