「ただいまー……あれ、市川まだ起きてたんだ」
「起きてたんだ、じゃないよ!
勝手に人の部屋入ってこないでよ。誰かに見られたら……ちょっ、先生?!」
「んー……聞いてるよ。市川いい匂いするな。
……風呂上がり? 髪、まだ少し濡れてる」
寮に帰るなり自分の部屋じゃなく市川の部屋のドアを開けた俺は、怒る市川を気にする事なく近寄り抱き寄せる。
まだ乾ききってない髪に耳の辺りから指を差し込むと、市川の身体が小さくすくんだのが分かった。
そんな市川を、口許を歪ませながら覗き込む。
「どうかした?」
「……っ、どうもしな……っていうか、耳元で話すの止めてよっ」
「なんで?」
髪をすくって露わにした市川の耳に直接声を注ぎ込む。
……耳が弱点だと知ってのわざとの行為。
予想通り抵抗の弱くなった市川に、満足して笑う。
「……市川、可愛い。抱きたい……」
「…っ……」
すっかり赤く染まった市川の頬にキスをして、顎に手をかけ顔を上げさせる。
そして、市川の唇を指でなぞってからゆっくりと近づき―――……。



