「なにか見たの?」

「うん。昨日の離着任式中だよ。

坂口が矢野センと知り合いだとか言ってたでしょ? その後、チラッと見たら、馬場がなんか嬉しそうに矢野センに話しかけてたから。

どうせ坂口との事聞いてたんだろうけど、話が終わった後もチラチラ矢野セン見てたし。

好きって聞こえてきそうな目で」


諒子と同じようなタイミングで、あたしも先生を見たのに。

……先生の隣に馬場先生がいた事すら分からなかった自分に、頬が熱くなる。


まるっきり先生しか目に入ってなかった事に苦笑いを零しながら、馬場先生を思い出す。


好きだった人だとか、好きでも望みがない人が同じ職場にいるのって……結構つらい事かもしれない。

あたしだって、先生に振られてればきっと―――……。


「馬場先生がどれぐらいの気持ちだかは知らないけど……でも、一度好きになったらなかなか諦められないよ」

「まぁね。あの歳で本気だったなら……結構引きずるかもね」


うんうん。と頷きながら言う諒子に、あたしは身を乗り出す。