「市川」
そう呼んだ先生が、あたしの手を握る。
ドキドキうるさい心臓が、破裂するんじゃないかって思うほど大きく動いて、身体を内側から奮わせた。
「知ってると思うけど。
どうしょうもないくらい、市川に惚れてる。
この先も、手放すなんて考えられない」
真っ直ぐに見つめてくる先生の瞳から、揺るぎない想いが伝わってくるみたいだった。
伝わってくる気持ちが、嬉しさで胸をいっぱいにする。
「市川の心の準備ができたら。
―――俺と結婚してください」
戸惑っていた気持ちを、嬉しさが包み込む。
「……い、……はい」
じわっと涙が一気に浮かんでくるから、うまく声が出せなかった。
なんとか涙を堪えて見上げているあたしを、先生が笑う。



