「でも、そのうち挨拶は行くから」
「挨拶って……え、うちに? なんの挨拶?!」
「『結婚を前提に実姫さんとお付き合いさせて下さい』って挨拶」
「えっ」
驚いたあたしを見て、先生は難しそうな顔をして言う。
「だって、いきなり『結婚させて下さい』って行くよりはいいだろ。
俺と市川の関係は特殊だし、親父さんも俺の事知ってるし。
学校が違えばまた対応も違ったかもしれないけど……、急に行くのはよくないと思って」
「だけど……、結婚とかって……」
「市川へのプロポーズの方が先だって事?」
「違っ……」
一気に顔が熱を持ったのが分かった。
慌てて否定して顔を上げると、先生は微笑んだ後座っていた椅子から立ち上がって、あたしに近づく。
そして目の前まで来ると、真剣な眼差しをする。
ドキっとして、思わず声を奪われた。



