甘い魔法②―先生とあたしの恋―



それしか言えなかったのは、ショックだったから。


あたしと先生がここから出たら、

この寮であった事全部が、思い出の中に消えちゃうような気がして、悲しかった。


先生が隣に住んでた事も。

このボロボロの寮で、2人でいる事が当たり前だった事も。


全部がなくなっちゃうみたいに感じて、悲しかった。


きゅっと唇を結んで手を握り締めようとして……、手の中にある鍵に気付く。

じゃあ、この鍵ってなんの……?


「それ、新しく借りた俺の部屋の鍵」

「先生の部屋の……?」

「市川の実家とも、市川が行く大学とも離れてない場所だから。

ちょうどその中間点ぐらいの場所にした」

「……あたしが寄れるように?」


半信半疑で聞くと、先生はにこっと笑って頷く。


「1LDKだけど、結構広めだし、ふたりで暮らしても問題ないくらいの広さだから」

「どういう意味?」