「……俺、席外したい気分」
「外せば?」
「外さねぇよっ。
おまえと市川2人になんかできる訳ねぇだろ。
市川は隠せてんのに、俺がダメって……なんだよ、それ」
椅子に座って、左手でついた頬杖で目許を隠す先生に、思わずまた母性本能が働きそうになる。
坂口先生は、そんな先生を見ながら笑う。
それから、真面目な声で言った。
「そんだけ本気だって事でしょ。
正直、市川さんに対するハル兄の感情にはびっくりしてるし。
あんな冷血人間だったくせに。
……きっと、今までの反動なんだよ」
「うるせぇな。俺の事分析すんな」
「だって分かるし。
まぁ、ここまで入れ込むとは思わなかったけど、でも理性があるから大丈夫でしょ。
ハル兄だって、市川さんから全部を奪って自分に縛り付けたいわけじゃないだろうし」
ニコっと笑う坂口先生。
先生はそれをうっとおしそうに見ていた。



