思い出されるのは、ここで坂口先生を紹介された時の事。
あの時、坂口先生は確かに驚いてた。
「ハル兄の事は昔から知ってたから、ハル兄が市川さんにどれくらい入れ込んでるかは見てすぐに分かった。
だけど、市川さんは……よほど気をつけてたのか、俺を警戒してたのか、気持ちを表さなかった。
色々意地悪したのに」
「……意地悪?」
「うん。
馬場先生が階段から落ちた時、ハル兄に付き添うように言ったり、岡田くんとの事からかったり」
「あ……、」
確かに覚えがある。
まさかそれも計算で言ってたなんて。
そう思って顔をしかめると、坂口先生が申し訳なさそうに微笑む。
「岡田くんとの事聞いた時、初めて自分の気持ちをはっきり言ってきたけど……でも、一度もハル兄を見なかったよね。
ハル兄は意味深な目で市川さんを見てたけど」
「……」
「市川さんは、それに気付いてたハズなのに、一度も目を合わせようとしなかった。
全部、ハル兄との関係を守るためだったんだって気付いたのは、その後だったけど」



