自然と市川に触れようとした手。
だけど、市川の言葉がそれを止めた。
今までの悲しみを込めたモノじゃなく、怒りのこもった声が。
キっと俺を睨んだ市川は、明らかに怒った表情で俺を見る。
そして。
「巻き込めばいいじゃんっ!
なに、まともな大人ぶってるの?
教師が生徒に手を出す時点で、そんなのもうまともじゃないんだからっ」
「……おまえ、それを言うのは反則……」
「まともじゃないなら……、今更カッコつけなくたっていいじゃん。
あたしは、教師って立場がありながらもあたしの気持ちに応えてくれた先生が好きなの……。
先生が、教師失格だとしても……、それでも、好きなの……っ!」
「……」
市川の必死さが胸を打つようで、返す言葉が浮かばなかった。
半分怒った声が、俺の中のびびっていた部分を奮い立たせる。
「あたしが欲しいのは、先生だけだよ……。
完璧な彼氏とか、普通の恋愛が欲しいんじゃない。
先生が、欲しいの……。
なのに、それを偽らないでよ……。
ただ一つ、あたしが望んでるモノを、偽らないで……っ」



